
8月5〜7日、毎年恒例の「ゲイ・プライド」がアムステルダムで開催された。
この世界屈指のゲイの祭典は、今年で16回目。世界各国から大勢のゲイが集まり、その社会的立場の向上を求めるとともに、純粋にフェスティバルを満喫する。
そのハイライトは、なんといっても中日に行われる「カナル・パレード」だ。
今年のパレードのテーマは「All together」。
80の団体や個人が、思い思いに装飾した豪華なボートに乗ってパレードに参加した。
防衛省のボート
今年、一番話題を集めたのが、防衛省のボートだ。
防衛省がこのパレードに正式に参加するのは初めて。
同性愛、トランスセクシュアルの軍人たちが制服を着てパレードに参加することを、防衛省が初めて許可した。
ただひとつ条件つき。
「ユニフォームを着ているのだから、それに相応しい行動をするように」
だから思い切りはじけて、踊ったりしてはいけなかったのだそう。
それでも、初めて同性愛者、トランスセクシュアルの軍人として人々の前に登場した彼らの誇らしい笑顔は印象的で、「勝利のオーラ」を放っていた。
周りで見ていた人たちも、彼らのボートを目の前に「鳥肌がたつね!」「かっこいいね!」と声をかけあっていた。
下の写真の中央に写っている東洋系の人は、アメリカ人の元軍人。
今年の防衛省のパレードに招待されて参加している。
聞けば彼は、アメリカの軍で働いていた時に自分がゲイであることを公にしたため解雇されてしまったのだそう。
「制服を着てこのようなフェスティバルに参加できるなんて本当に素晴らしい!」と感無量でインタビューに応えていた。

ここアムステルダムで世界初の同性婚が執り行われてから、今年で10年
表面的には、同性愛者やトランスセクシュアルの市民権は安定したようにも見えるが、「ホモフォビア」(同性愛者に対する偏見や差別)による傷害事件は増加の傾向に。
そんな現状を受けて、自由民主国民党、民主66党ほかの各政党も「ホモ差別を厳しく罰す!」などのプラカードを抱えてパレードに参加した。
宗教的な理由などから、公務員には同性婚を執り行う公務を拒否する権利があると言われるが、公務を拒否する公務員は辞めさせるべきという見方も強く、現在論争を呼んでいる。
「公務を拒否する公務員を拒否せよ」というプラカードや垂れ幕が多く見られたのは、このためだ。
統計によると、オランダ国民の6%が同性愛。彼らの自殺率はヘテロの5倍。
約70%の同性愛者が、差別から傷害事件まで、何らかの被害を受けている。
学校で様々な困難を抱える同性愛の学生たちも、パレードに参加。
同性愛、トランスセクシュアルに関する情報を学校で提供することを義務づけるよう訴えた。
文部文化科学大臣は、「学校でそれらの情報を提供することは非常に重要だが、それは各学校が判断して行うべきこと」として義務づけはしない意向を表した。
約30年前に「ゲイ新聞」が誕生してから、彼らの社会的地位の改善を求める人権運動は本格化していった。その長年の努力の末にようやく定着し始めた「差別のない社会」だが、近年の不景気や治安の悪化など、さまざまな要因の中で揺らぎ続けているのが現状だ。


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